暗い森を彷徨った後
〔森/アリス〕 「・・・なんで、何で、出られないんだ・・・。」 一体どれだけの時間を歩いただろう・・・。 暗い森の景色は一向に変わらず もしかしたら 歩いていれば、いつか森の外に出られる。 そう思って頑張っていたけれど 「これだけ歩けば、森を出ていても不思議じゃないのに・・・」 ちょっと休もうと腰を下ろすと なんだか眠くなってきた・・・ もう今日は寝てしまって、明日また頑張って歩こう まぶたが落ちる 『・・・・・・寝ちゃ、駄目だよ・・・。』 ・・・駄目だよ、もう眠い 『今寝たら、もう起きられない・・・。もう少し頑張るんだ。』 だって、一向に景色が変わらないし・・・ 『・・・大丈夫。僕が案内してあげるよ。』 『帰ろう、・・・城へ・・・。』 聞いたことも無い声・・・ ・・・・・・会った事が・・・ある・・・?
『・・・ろ・・・哭・・・』 「・・・双氷?」 あるはずも無い。 だけど、少しだけ気になって外に気を向けると 「・・・・・・・ん?」 数日前に感じた同じ妙な気配。 戻るように言おうと向かった先に・・・ 「・・・双氷!?」 懐かしい姿を見かけた・・・気がした。 意識はなく、衰弱しているようにも見える このままにはしておけない・・・が さすがにこの状態のこいつを鏡団に 「・・・・・・困った。」 正直、面倒くさいことは苦手なんだ。 「・・・助けろって事か? そんな事をつぶやきながら
《・・・何で、ここにアリスが・・・?》 《・・・・・・森で拾った。》 遠くで声が聞こえる。 『拾った、なんて・・・他に表現あっただろうに。』 笑っているような、懐かしんでるような・・・ 「・・・誰?」 『ごめんね・・・。少しの間、体を借りるよ。』 「体を借りる・・・?」 誰という問いに答える事も無く
ふと気配を感じた。 「・・・誰だ?」 身動きの出来ない体では誰か見る事は叶わないが 『そのままで聞いて欲しいな・・・。』 ただ話をしに来ただけだから、とその者は言う。 「・・・まあ、暇はもてあましておる。話があるのなら話すが良い。」 何故だか、その話を聞いてみたいと思った。 『ありがとう・・・。』 何に対して?という思いはすぐに消えた。 「泣く・・・か。無理であろう。 最後の言葉は、つぶやくように小さく。 『そうだね、君たちは泣かない。・・・だから、心配なんだけどね。』 とても、ね。と付け足して。 「・・・」 そこにいる人物は、思い出す人物とは違うはずなのに 『・・・お礼をね、言いにきたんだ。』 お礼・・・その言葉がお別れに聞こえ 『ありがとう。・・・本当は、もっと一緒にいたかったよ。』 言葉と同時に気配が消えた。
「・・・ん?」 ふと気配がして、気配の方に視線を向ける。 「・・・誰だ。」 『そう、殺気を出さないで欲しいな。』 知っている声のようで、だがなじみのない言葉遣い。 『姿は見せないでおくよ。混乱しそうだしね。』 「一体誰だ。」 『風哭、君は、君の信じられる道を見つけたのかい?』 「僕の信じられる道・・・?」 なんとなく何のことを言っているのかは分かった。 『少し羨ましいな。・・・僕には出来なかった事だから。』 「・・・まだ、もしかしたら、という程度だ。」 『ふふ、そうか。』 でも、信じられそうなんだね。 「お前は・・・。」 なんとなく、ある人物が思い浮かんだ。 『・・・そろそろ移動しないとまずいかな。』 ごめんね、もうちょっと話していたかったけど、と 「ま、待て!」 『大丈夫だよ。君の信じる道を進んで・・・。』 そんな言葉を残して、気配は完全に消えてなくなった。 〔城/?〕 「本当は、皆にお別れを言いたかったんだけど・・・。」 影哭は、なんとなく会わないほうがいい気もする・・・。 言いたい事は本当はたくさんある 「ひとまず、森の外まで行かないとね。」 また迷っても困るだろうしね。 ・・・名残惜しく、一目振り返ってから。 〔森の外/アリス〕 意識が浮上する 『ごめんね・・・。もう一度だけ会いたかった』 聞いたことが無いはずなのに 『もっと一緒にいたかった・・・。一緒に生きていたかった・・・』 『ありがとう、少しでも皆と会えて嬉しかった。』 『そして・・・、アリス、君にまた会えてよかったよ・・・。』 ここにいた時の記憶は、もらっていくよ。 君は君のやり方で皆を救って・・・ 最後の方は、声ではなく・・・思い。 記憶は消えてもこの思いは、残るだろうか・・・?
「・・・ん?ここ、何処だ?」 「つーか、今何時!? 『・・・・・・』 「・・・?」 声が聞こえた気がした・・・ 「・・・・・・そう・・・ひ?」 知らない響きが口からこぼれた 「・・・何だっけ? かすかな疑問は、焦りと不安に掻き消された。
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